先日、国交省の関東地方整備局からTATERU(タテル)への聴聞が行われ、その後TATERU(タテル)の宅地建物取引業法に該当する業務を停止する処分が発表されました。
業務停止処分を受けたTATERU(タテル)ですが、営業再開はいつ頃になるのでしょうか?
また、TATERU(タテル)では2018年8月末に改ざん問題が発覚してから、不動産事業にどれくらいの影響を及ぼしたのでしょうか?
今回は、TATERU(タテル)の営業再開についてと、改ざん問題が発覚してからの不動産事業へのダメージ、さらに今後の事業戦略について考察してみます。
TATERU(タテル)の現状や今後について気になっている方は、ぜひチェックしてみてください。
目次
TATERU(タテル)の営業再開はいつになるの??
TATERU(タテル)の営業再開について考察していきましょう。
考察をする前に、業務停止処分について改めて解説していきます。
TATERU(タテル)が業務停止処分を受けるまでの流れ
2018年8月末にTATERU(タテル)が預金残高のデータ改ざんを行い、銀行の融資審査を通りやすくしていたという内容の報道がありました。
この内容についてTATERU(タテル)側は事実を認め、謝罪しています。
その後TATERU(タテル)では第三者委員会を設置し、今回の件以外にも預金残高のデータ改ざんが行われていたのか、調査することになりました。
特別調査委員会からの調査結果報告書(要約版)受領および今後の対応に関するお知らせ
第三者委員会が関係者からヒアリングを続けていき、データ改ざんには31名の従業員が関わっていることが分かったのです。
TATERU(タテル)は第三者委員会が調査している最中に、既に再発防止策を発表し早期対策と環境改善に努めてきました。
当社従業員による不適切行為に対する再発防止策に関するお知らせ
第三者委員会でも再発防止策について評価・提言しており、二度と同じことが起きないようコンプライアンス遵守体制の再構築を図っています。
役員報酬も減額し、問題のあったアパートメント事業の新規営業もストップさせ、会社を変えていこうと努力を続けてきましたが、関東地方整備局から宅地建物取引業法に基づく聴聞を実施することが分かり、業務停止処分に陥ってしまうのではないかと予想されました。
実際に、聴聞後には業務停止処分が決まってしまいます。
業務停止期間は7月12日~7月18日の7日間で、業務停止を受ける範囲は宅地建物取引業に関する業務となります。
例えばアパートを新規契約させるような業務は禁止となりますが、アパート管理における業務は宅地建物取引業に該当しません。
つまり、1週間の業務停止処分を受けていますが、本格的な営業を再開していないTATERU(タテル)にとって、企業的に大きなダメージにはなりませんでした。
アパートメント事業の営業再開の見込みは?
業務停止期間は7月18日までになりますが、現在は業務停止処分関係なく、アパートメント事業の新規営業をストップさせている状態です。
業務停止期間が終わっても新規営業が再開するとは言えません。
では、アパートメント事業の営業再開はいつ頃になるのでしょうか?
アパートメント事業の営業再開見込みですが、似たような事案が見つからなかったため、あくまでも予想に過ぎませんが、恐らく秋以降になると考えられます。
現在は再発を防止するために会社の土台部分から作業の見直しを図り、構築し直している段階です。
いくら業務停止期間が終了したとしても、中途半端に新規営業を再開してしまっては同じようなことが起きてしまう可能性も考えられます。
丁寧にシステムを構築していくためには、まだもう少し時間がかかるのではないかと予想できます。
また、TATERU(タテル)では顧客と土地をマッチングさせ、希望に沿ったアパートを建築していくことが基本の流れとなります。
つまり、アパート経営を検討されている方が集まる時期に営業を再開しないと意味がないのです。
TATERU(タテル)の場合は、アパートを建築していく必要があります。
木造アパートの場合、(階数×1ヶ月)+1ヶ月が建築工事期間の目安になっていて、2階建てを作るなら約3ヶ月でアパートが建ちます。
入居者が増加する時期のことを考えると、秋から新規営業を再開すれば4月入居がギリギリ間に合うかもしれません。
4月入居が難しかったとしても次に入居需要が高まる次の10月に向け、丁寧な話し合いが行えます。
このように、今夏すぐに新規営業を再開させるほうが良いに越したことはないのですが、遅くとも秋頃までには本格的に再開するのではないかと思われます。
改ざん問題があってから不動産事業はどのくらいダメージを受けたのか。
改ざん問題が発覚してから既に11ヶ月が経過しようとしていますが、改ざん問題が発覚してからTATERU(タテル)の不動産事業はどれほどのダメージを受けてしまったのでしょうか?
改ざんの発生件数
データの改ざんを実行したと思われる従業員は営業部長及び部長代理を中心に、31名が関与していたと言われています。
第三者委員会によると、データ改ざんが行われたとされる案件数は調査対象期間(2015年12月以降)の成約棟数2,269件中350件に及ぶことが分かりました。
特別調査委員会からの調査結果報告書(要約版)受領および今後の対応に関するお知らせ
改ざん問題後の受注棟数や売上推移は?
改ざん問題後の受注棟数や売上推移ですが、下記の表・グラフから分かります。
成約数の推移から見てみると、改ざん問題が発覚する前は約255件もの成約数だったものの、第3四半期で45件、第4四半期で35件にまで落ちてしまいました。
ただ、売上高を見ると2018年の第4四半期で283億3,475万円であり、過去4年の売上高と比較しても高い数字であることが分かります。
また、売上高は全体の売上が関与しているため、アパートメント事業以外の売上が高まったことで売上高の増加につながりました。
例えば、スマートホテル事業では2018年度において13棟の企画開発を実施し、売上高は前年同期比263.9%増の5億44百万円となっています。
アパートメント事業の新規営業がストップしてしまい、売上につながらなくなってしまった反面、他の事業で売上高をキープしているのです。
(訂正)平成30年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結) 「1.経営成績等の概況」より
改ざん問題後の入居率推移
改ざん問題後、アパートメント事業の売上は大きく落ちてしまいましたが、アパートの入居率に大きな影響は出てしまったのでしょうか?
アパート入居率を調べてみたところ、何と入居率は2019年3月末時点で99.2%ということが分かりました。
オーナーとしては改ざん問題により空室リスクが生まれてしまうのではないかと懸念していた方もいらっしゃったことでしょう。
2018年12月末時点の入居率は97.9%だったため、約3ヶ月で入居率が向上しています。
入居率推移は改ざん問題後もほとんど変わらず、むしろ上昇していました。
受注棟数や売上推移、入居率推移を見てきましたが、改ざん問題が発覚し新規営業をストップしていることでアパートメント事業の売上は減少しているものの、入居率が堅調に推移していることで管理収入が入り、高い売上高につながっていると考えられます。
販管費の問題はどうクリアするのか?
ここで問題になってくるのが、販管費の増大です。
売上高はキープしているものの新規営業を行っていないため、営業の人件費が余分に掛かっている状態となっています。
2019年12月期第1四半期の決算短信を見てみると、人件費も含まれる「販売費及び一般管理費(販管費)」が、約20.8億円掛かっていることが分かります。
もちろん、販管費は人件費だけではありませんが、多くのコストがかかっています。
新規営業がまだ再開していない手前、管理収入で得た利益をできるだけ有意義に活用するためには販管費を削減した方が良いと言えます。
TATERU(タテル)では、7月5日に「早期退職優遇制度」の実施について発表がありました。
早期退職優遇制度は早期退職者を募り、業績を回復させるための手段です。
早期退職優遇制度の活用で特別退職金が支給されたり、希望者には再就職支援サービスを利用できたりします。
TATERU(タテル)の早期退職優遇制度では、2019年8月1日現在でTATERU(タテル)本社以外にも、完全子会社の株式会社TABICTや株式会社Robot Home、株式会社TATERU Fundingに勤めている正社員が対象となっています。
募集人員は160名程度を募集していました。
TATERU(タテル)が有価証券報告書で公表している平均年収は720万円だったため、単純に計算してみると720万円×160名=11億5200万円が販管費から削減できることになります。
もちろんあくまで平均値からの計算ではありますが、早期退職優遇制度によって多くの販管費削減が行えることは間違いないでしょう。
有価証券報告書-第13期(平成30年1月1日-平成30年12月31日)
改ざん問題後の影響が心配されましたが、それほど大きなダメージにはつながっていないことが分かりました。
このまま安定した管理収入を得ていけば、新規事業の育成しつつ再出発が図れるようになると考えられます。
今後のTATAERU(タテル)の事業戦略について考える
TATERU(タテル)は業務停止処分を受けましたが、停止期間を終え、現在は業務停止処分を受ける前(新規営業以外の業務)の状態になっています。
これからTATERU(タテル)はどのような事業を展開していくのでしょうか?
TATERU(タテル)の事業戦略について考えてみましょう。
不動産事業に依存しない、IoT事業の存在
これまで日本の不動産業界は様々な波を超えてきました。
例えば80年代に土地バブルが発生し、多くの不動産会社が儲けたかと思えば、90年代初頭にバブルが崩壊し、さらに2008年にはリーマンショックの影響で不動産が売れない時期が発生してしまいます。
こうした波を乗り越えた今、不動産業界では様々な動向が見られているのです。
直近の動向と言えば、2020年の東京オリンピック開催に向けた動きです。
選手村が設置される予定の湾岸エリアは特に人気が集まっており土地の価格が上昇しているのですが、大会後に転用される居住用マンションは既に供給過多で需要がなく、大きく値下がりするのではないかと言われています。
また、2022年には空き家問題が深刻化するとも見られ、人口減少の影響で将来的には不動産業界が低迷するのではないかとも予測されています。
もちろん、人口減少の影響はまだまだ先の話とも言えますが、企業側はいち早くこうしたリスクに対する先手を打っていかなくてはいけないでしょう。
不動産会社と言えば不動産に特化した事業を展開していることが一般的ですが、TATERU(タテル)の場合はそうではありません。
ベースにあるのは不動産会社ですが、IoT事業における発展も続けています。
TATERU(タテル)ではアパートの建築・賃貸管理を提供していますが、IoTアパートならではのシステム構築や大家さんが活用できるアプリの運営なども行っています。
システム化させたことにより、大家さんにとって利便性が高まっただけでなく、他のアパートにはない「付加価値」を付けられたことで空室リスクの回避にもつながっているのです。
事実、先程もご紹介したようにTATERU(タテル)のIoTアパートの入居率は2019年3月時点で99.2%と高い数字を誇っています。
一般的な不動産会社とは異なり、IoTシステムを構築化させることで付加価値の高い不動産を提供することができるのです。
また、例えば東京オリンピック後の不動産状況や2022年の空き家問題、人口減少による影響などで多くの不動産会社は機能しなくなってしまう場合があります。
TATERU(タテル)でも同様に、少なからず影響を受けてしまうことでしょう。
しかし、不動産だけに依存せずIoT事業が展開できているので、不動産会社としての生き残りにも長けていると考えられます。
インバウンド需要を含めた新規事業の展開
TATERU(タテル)のメイン事業はIoTアパートメント事業ですが、それだけにとどまらず様々な事業を展開しています。
特に注目したいのが、スマートホテル事業です。
スマートホテル事業とは、IoTアパートメント事業と同様にアプリで土地をマッチングして建物を建てるのですが、建物はアパートではなく満足度と稼働率の高いスマートホテルになります。
スマートホテルの経営と言っても「bnb kit」により、チェックインや宿泊者対応、清掃などの管理運用は全てTATERU(タテル)の子会社である株式会社TABICTが代行してくれるので安心です。
このスマートホテル事業は着実に成果を出しており、2019年12月期第1四半期の決算では、約2億円の売上高を出していました。
TATERU(タテル)がスマートホテル事業にも注力している理由は、インバウンド需要の増加が関係しています。
近年訪日する外国人観光客の数が増えてきました。
日本政府観光局の調べによると、2018年の外国人観光客の累計総数は約3100万人で前年度より8.7%も増加しています。
日本政府観光局(JNTO) 平成30年 訪日外客数・出国日本人数
2020年には東京オリンピックが開催されるため、より多くの外国人観光客が訪れることでしょう。
こうした背景からインバウンド需要が増加しており、外国人観光客向けのサービスも増えてきています。
TATERU(タテル)でもインバウンド需要の恩恵が受けられるよう、bnb kitを活用しているのです。
bnb kitなら多言語対応でタブレット上からチェックイン手続きが済ませられるので、英語が話せないという方もスマートホテルのオーナーとしてインバウンド需要の恩恵が受けられます。
Robot Homeなどのスマートハウス化による需要の増加
TATERU(タテル)の代名詞でもあるIoTアパートには、子会社のRobot Homeが生み出したIoT賃貸経営プラットフォーム・Apartment kitの活用が欠かせません。
オーナーと管理会社、さらに入居者の3者が連携を取りやすいようにシステムを構築し、様々なアイテムによって安全で暮らしやすい生活が手にできるようにしています。
例えば、賃貸経営が行いやすいようにオーナー用のアプリを開発・提供していたり、生活を豊かなものにするためのIoTデバイスがアパートに初期設備として備わっていたりするのです。
こうしたIoTを活用したサービスは「スマートハウス化」に向けた動きでもあります。
スマートハウスとはIoTなどを活用し、家庭の機器などを相互的に連携させることで、利便性や安全性、快適性を高めた住宅を指します。
スマートハウスは一昔前であれば「未来の家」というイメージがありましたが、近年はかなり現実的になってきているのです。
ただ、やはり最新設備を導入する必要があるため、普及・浸透はそれほど進んでいません。
しかし、Robot Homeなどによってスマートハウス化が現実になっており、利便性の高さから需要は増加しているのです。
今後のTATERU(タテル)の事業戦略としては、コンセプトは変えずに、不動産事業に特化するよりもIoTと組み合わせて幅広く事業を展開していくのではないかと考えられます。
また、最近は外国人観光客も都心部だけではなく様々な地方に足を伸ばしている姿が見られるため、地方都市にもスマートホテルを設置していき、インバウンドによる恩恵を受けやすくするのではないでしょうか?
今後のTATERU(タテル)の事業展開も見逃さず、注目していきましょう。