その他の噂・真相

山梨県と富士急行の県有地問題を検証【これまでの経緯/お互いの主張/今後の行方など】

山梨県が富士急行に対して貸し付けている県有地について、とある問題が浮上していることは皆さんご存知でしょうか?

今回はこの県有地問題について、これまでの経緯今後の行方などを整理し、事実関係を検証してみました。

最近になって県有地問題について知ったけれど、まだ詳しい経緯を知らない方や、お互いの主張について改めて整理したい方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

これまでの経緯

地元住民による訴訟

事の始まりは2017年10月、山梨県南アルプス市の男性が「山梨県が富士急行に貸し付けている山中湖畔の県有地の賃料は不当に安い」として、県側に歴代知事らへの損害賠償請求を行うことを求めた訴訟です。

富士急行は、富士急ハイランド山中湖畔の別荘地富士急行線などを運用している全国的にも有名な企業です。

訴訟で争点となっている山中湖畔の県有地は1927年に県から富士急行に貸し付けが始まっており、富士急行は開発前の山林原野の状態から土地を造成し、別荘地やゴルフ場を運営しています。

現在の貸し付け面積は約440ヘクタール、貸付料は年間約3億3千万円になります。

訴訟において男性側は、この貸付料が開発前の山林原野の状態を前提として算出されており、開発後の現状を踏まえた算出では、不当に安いと主張しています。

山梨県の主張

この件に対して、山梨県は当初「貸付料は適正」と主張していました。

しかしながら2020年11月に行われた口頭弁論で、県側は「開発にかかった費用がすでに回収されている」として現在の土地価格で算出すべきと主張を転換し、これまでの約6倍にあたる年間約20億円が妥当であるとする鑑定書を提出しました。

そのうえで県はこの県有地の賃貸借契約は違法で無効としたうえで、検証委員会を設置して差額分の請求などを検討しています。

富士急行の主張

これに対し富士急行側はリリースで「現行、弊社が山梨県(以下「県」)に支払っている賃料については、法令と県のルールに則り、公正なプロセスを経て決定された公正な賃料です。原野から弊社が開発してきた事実が勘案されたもので、県はこれまで一貫して『賃料については適切』と見解を述べてきています。このルールは、県のウェブサイトにも掲載されており、弊社としては、そのルールを合理的であると判断し、県との賃貸借契約を締結しております。 」と反論しています。

現在の状況

現在山梨県は、外部の専門家である弁護士で構成された「住民訴訟に係る検証委員会」を立ち上げ、貸付手続の適正性、県に損害賠償請求を行うよう求められた対象者(歴代知事ら)の責任の有無や請求額などについて検討を進めています。

更に山梨県議会は「県有地の貸付に関する調査及び検証特別委員会」を設置し、この件について審議を行っています。

一方、富士急行は2021年2月に「賃料改定に関するお伺い」を県に対して提出。その後正式に県側の主張を受領したとし、「適正な手続きに則って締結されている弊社と県の賃貸借契約を一方的に違法無効と主張していることや住民訴訟内や山梨県議会でも未だ適正賃料の議論がなされている中、不動産鑑定基準に則っていない根拠のない不動産鑑定書に基づく不当に高額な賃料を適正賃料と主張していること等、受領した本書面の内容について弊社は到底受け入れられるものではありません。」と、県に対して法的手続きを進めるリリースを出しています。

山梨県が主張を変えた理由

適正な対価とは

山梨県の主張が変わったことについて、長崎幸太郎県知事は2021年1月のインタビュー記事で「訴訟が続く中で、地方自治法の議論が出てきました。地方自治体の公共財産の貸し付けは適正な対価によらなければならないと定めていて、適正な対価とは市場価格、時価であると解説されている。開発前の山林原野の状態を前提とするという県の主張は成り立たないことが判明したのです」と述べています。

自衛隊・北富士演習場への「二重貸与」も判明

他にも東洋経済のインタビュー記事の中で、「富士急に貸している440ヘクタールのうち、17ヘクタール分については、北富士演習場の一部として国に貸した形になっている。この二重賃貸は1973年度以降、半世紀近くにわたって続いており、富士急が何の努力もしていないのに貸付料と演習場交付金の差額として総額1.6億円もの利益が同社に提供されていることもわかった。」と述べています。

開発した富士急行の役割は高く評価

一方で、富士山麓地域の開発について知事は富士急行が大きな役割を果たしてきたというのはその通りで、高く評価します。」と、富士急行が山梨県の地域経済の活性化や観光事業の発展に貢献してきたことを評価しています。

さらに「山中湖周辺は、別荘地としても軽井沢や箱根なみの高級感を持たせられる可能性がある。」「県は、地主として土地の価値を上げたい。大正時代と同じように、富士急行にも理解していただきながら、協力して新たな開発計画を作っていければよいと考えます」と、今後の開発にも意欲を見せています。

富士急行に対して一定の歩み寄りも

県は富士急行の「賃料改定に関するお伺い」に対して、「山梨県はいかなる局面と段階にあっても解決と合意に向け、いつでも劈頭(へきとう)第一に立ち、しっかりとご相談させていただきたいと考えております」とも回答しており、賃料改定に応じる場合は歩み寄る姿勢も見せています。

当初、山梨県は損害賠償や不当利得の返還を求めていく方向で、その金額は総額で150億円にのぼる可能性もあったと言われています。こうした巨額の賠償金請求は山梨県と富士急行、双方の利益にならないと考え、県側が和解案を示しているのだと推測されます。

適正化で得られる財源の使いみち

住民訴訟から発展した県有地問題について、「適正な対価となる新たな賃料を現契約に反映させ、それらにより得られた財源は、少人数教育や介護待機者ゼロなどを目的とする新たな基金に積み立て、県民の皆様に還元して参りたいと考えております。今回の住民訴訟を契機として、県民共通の財産である県有地のさらなる適正化を図って参りますので、御理解と御協力をお願いいたします。」と、知事としては県民利益を優先し見直しを進めたい意向を表明しています。

今後の行方はどうなる?

ここまで検証を進めてきて判明した通り、山梨県側と富士急行側はそれぞれ主張が異なっており、現段階でどちらの主張が正しいと断定することはできません。

富士急行側が直近のリリースで「県に対して法的手続きを進める」としていることからも、今後は法廷の場で公正に審判が下される可能性が高いでしょう。

今回の県有地問題について、貸付料は果たして適正だったのか、契約は無効になるのか、歴代知事の責任はどうなるのか、など気になる点がまだ残っています。

 

万が一、貸付料が適正でなかったとされる場合は早期に適正な状態に戻し、山梨県と富士急行が互いにフェアな状態で、山梨県の地域経済の発展と、観光事業の推進に力を合わせて欲しいと思います。

まさに、そうした状態が県民にとっては一番有益だと言えるでしょう。