化学

トレハロース(トレハ)で有名な株式会社林原に突撃取材!!

みなさんこんにちは。

私のサイトにご訪問頂きましてありがとうございます。
今回は皆さん聞いたことがあるかもしれませんが、「トレハロース」という糖質を製造、販売していらっしゃいます株式会社林原様にお時間を頂き、トレハロース(商標名:トレハ)とはどの様な糖質なのか、どのように製造までたどり着けたのかをインタビューして参りました。

お菓子の原材料名欄を見るとよくトレハロースという糖質が入っているのですが、ご覧になったことがある方はいらっしゃいますでしょうか?
ざっくり説明すると、ものを甘くしたり、柔らかくさせる糖質なのですが、皆さんはどれほどこの糖質についてご存知でしょうか。
トレハロースは前述の株式会社林原が長年に渡って製造販売を行っており、今回はその林原の丸田様にお時間を頂き、製造までの秘話などについてお話頂きました。
食品メーカー、調理に携わる方にとっては不明点を解決するお話があるかもしれませんので、是非ご覧ください!

トレハロースってなに?

ということでトレハロースのまずは概要をご説明いただきました。
ずばり質問は、「トレハロースってなに?」です。

「トレハロースはグルコース(ぶどう糖)が2個つながった糖質で、砂糖として知られるスクロースと同じ二糖類の仲間です。
トレハロースは熱や酸に対して安定で、メイラード反応(熱が入って茶色く色が変わったり、成分が変わる反応のこと)をほとんど起こさない点が砂糖と異なります。
また、保水性や氷結晶の微細化、でん粉の硬化を抑制するなど、様々な食品の品質向上を助けます。

さらに甘さも砂糖の40%程度ですので、和菓子や洋菓子をはじめ、昨今の低甘味ブームに重宝されるとともに甘さをつけたくない食品にも広く利用できます。
トレハロースはカタカナ表記ですので合成甘味料とよく間違われますが、実は、我々が普段から食べている椎茸やエリンギ、マッシュルームなど茸類をはじめ、
酵母などにも含まれる天然に存在する糖質ですので、安全性に全く問題がないのは言うまでもありません。
当社が1992年に発見したトレハロースを生成する酵素も土壌中に生息する微生物由来で、このことからもわかるように様々な微生物がトレハロースを生成します。
消化吸収では、インスリン刺激性が低く、個人差はありますが摂取後の血糖値変化が緩やかな糖質であることもわかっています。」

大変わかり易くご説明頂き、ありがとうございます。甘さ控えめな糖で、かつでん粉が固くなったりすることを抑制できるということですので、お米やお餅?などにも活用はできそうですね。一番驚いたのはエリンギや椎茸、微生物がトレハロースを生成しているという点ですね。

お話をお伺いするまでは人の手によって開発された合成甘味料の一つだとてっきり思っていたのですが、自然由来の糖質ということですね。

グルコースとの違いは?

また、もう少し細かい話になるのですが、化学的にトレハロースを説明していただくとどうなるのでしょうか・・?
よくグルコースという糖質についても耳にするのですが、トレハロースとグルコースの違いというのはあるのでしょうか。

「砂糖として知られるスクロースは、グルコースと果糖(フラクトース)からできている二糖ですが、トレハロースはグルコースが2個つながってできた糖質です。分子の大きさ(分子量)は、スクロースとトレハロースで同じです。
グルコースは分子式C6H12O6で表せるように、炭素6個、水素12個、酸素6個から構成されていますが、炭素には1位から6位までナンバーが付与されています。
麦芽糖として知られるマルトースはグルコースの1位ともう一方のグルコースの4位がつながった形状をとりますが、トレハロースはグルコースの1位と1位がつながった形状をとります。
トレハロースはグルコースの1位同士が結合しているため、マルトースのように還元力を示しません。」

一気に学生の頃の授業を思い出しましたが、つまり、私たちが知っている砂糖(スクロース)はグルコースと果糖(フラクトース)からできている。
グルコースが2つでトレハロースになるので、スクロースとトレハロースの大きさは同じになる。
同じくグルコースが2つ合わさるとマルトースという糖質になるのですが、各分子がどの様にひっついているのかがトレハロースとマルトースの違う点です、ということですね。

どうやって生産するの?

なるほど、つまりトレハロースは何処かの企業が開発をした人工の糖ではなく、自然界に存在していた天然の糖ということですね。
自然界に存在していると身体に悪影響がないとは断言はもちろんできませんが、天然という言葉は非常に魅力的ですね。

お話を伺っていると、やはり天然物を採取するというわけではなく、元々自然界に有ったものを生産している、ということだと思うのですが、この辺りについて詳細をお伺いしました。

「長年微生物が産生する酵素を研究し、様々な高機能素材を生み出してきた当社は、当時できないと言われた常識を覆し、微生物からの地道な探索で、トレハロースを製造できる酵素を1992年に発見しました。
その3年後の1995年にトレハロースの実製造を開始、当時としては極めてスピード感のあった仕事で、社員一丸となって成し遂げた当社の誇れる仕事の一つです。
トレハロース製造を他社よりも早く実現できたのは、当社が長年培った、酵素をつかってでん粉から糖を生産する技術ノウハウをそのまま利用することができたためです。
とはいえ、トレハロースは糖質の中でも非常に結晶性が高く、この結晶化のコントロールにはかなりの苦労がありました。
製品化に適した結晶のサイズや形状に作るために、現場の技術者は寝る間を惜しんで検討を繰り返しました。」

※画像は1996年の丸田氏

微生物からトレハロース製造に関わる酵素を発見するという文系の方からすると、途方もないお話ですが、そのような壁をたくさん乗り越えて今のトレハがあるのですね。元々でん粉からの糖の生産に強みを持っていた企業だからこそ、突破できたのですね。
新しい糖質の製造の安定化には技術者の皆さんのたゆまぬ努力があるのですね。
株式会社林原は創業依頼180年を越す日本でも有数の老舗企業ですが、商材の開発時にはこの様なエピソードが有ったのですね。

岡山県という都心からは離れたところで先人の技術者の方々が熱意を持って取り組んだ結果我々の普段の暮らしの中に浸透するような商品が出来上がったと思うと、普段の生活の中で少しはトレハロースが食品に含まれているのかどうかを気にしてみたくなりますね。

トレハロースってどうやって使えばいいの?

これまでたくさん製造に関する秘話をお伺いしてきましたが、実際に食品メーカーなどではどのようにトレハロースを使用しているのでしょうか。
最近ですと砂糖の代わりとしてトレハロースを使って料理をしているような人もいるとネットで見かけたのですが、どのくらいの量を使ってどんな料理に使えば良いのかわかりませんよね。


「様々な食品で利用が進んでいるトレハロースですが、製品に対して2から3%を使用量の目安として頂ければ結構です。
和菓子では団子が硬くなるのを防いだり、洋菓子では保湿効果によりスポンジケーキへしっとり感を与えます。またトレハロースは低甘味のため、和洋菓子ともすっきりした甘さに調整できます。
製菓では、トレハロースを配合することでサクサク食感が増したり湿気にくくなったりします。米飯では冷めてもご飯が硬くなりにくく、米ぬか臭も低減してくれます。パンではしっとり感の付与と乾燥を防いでくれます。麺ではもちもち食感の付与と茹で伸び防止が期待できます。タンパク源である肉、魚、卵などでは、パサつきを抑えてジューシー感を維持します。
また、マスキングにより独特の肉や魚の嫌な臭いを低減します。生野菜ではシャキシャキ食感を維持したり、色調を保持します。フルーツ加工品でも色調保持、風味保持などが期待できます。冷凍食品では、トレハロースを使うことで氷結晶が小さくなり食品組織の損傷を抑え、品質そのものを保ちます。

超高齢社会を迎えた日本では、少子高齢化により人手不足が加速していく中、病院や施設給食の安定供給や咀嚼・嚥下困難者に対する食の提供に関して注目が集まっていますが、トレハロースはこの分野でも活かせる特性を持っています。例えば、人手不足解消と衛生面の強化を目的に開発されましたクックチルやクックフリーズといった新調理システムは、調理した食品をチルドまたは冷凍保存後に再加熱して提供するため、品質低下が課題となっていますが、トレハロースを活用することで品質を改善できます。
また、介護食や嚥下食は軟らかく食品を加工するために加水量を増やすことがよく行われますが、水を増やしますと食品から離水が起こり、非常に嚥下しにくい物性となってしまいます。トレハロースは低甘味のため固形分を上げやすく、また水を抱え込む効果に優れているため、食品の離水を抑え、食品を嚥下しやすい物性にします。」

とても詳しい情報を頂きました。甘味料のトレハロースと印象が強かったのですが、でん粉の硬化を止めるという効能を利用することによって様々な食材に応用することができるのですね。
また高齢者の方にとっても食材をより食べやすく、また作る側の人にとってもコストを掛けずに調理を行なうことができるということですので、今後より幅広い活用の方法が現れそうですね!

今回のまとめ

さて、トレハロースとはなにか、というお話から一般の家庭でどの様に活用していけば良いのか、また高齢者社会においてのトレハロースの役割など丸田様にお話をお伺いすることができました。
これまでのお話をすこしまとめさせていただきますと、
・トレハロースは人工甘味料ではなく、椎茸、エリンギなどにも含まれる自然界由来の糖である
・株式会社林原は元々持っていたでん粉加工などのノウハウを駆使し、トレハロースの安定製造に成功、トレハとして商品化を行っている。
・トレハロースは砂糖よりも少しだけ甘くなく、食材の保存にも役立つ
・製菓だけでなく、麺、肉魚野菜などに活用することができる

ということでしょうか。この記事を書くに当って、また丸田様のお話を聞いて、自身のトレハロースに関する知識がかなり深くなりました。
創業期のお話もそうですが、トレハロース、またその他糖質に対する熱い情熱を感じました。
かつて微生物からトレハロース生成酵素の発見に挑戦した林原の社員さんたちがいるお陰で、今日私達がどれほど便利になっているのだと思うと、恩恵は計り知れませんね。

みなさんも是非、食品の後ろ側に書いてある成分表をご覧になってはいかがでしょうか。

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