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TATERU(タテル)の預金データ改ざん問題を徹底分析|西京銀行との関係性や株価への影響について

【本記事においてはアフィリエイトやその他の収益を目的として、試供品または取材費をいただいて記事を掲載しています】


不動産会社TATERU(タテル)の預金データ改ざんの経緯から、特別調査委員会の調査結果を踏まえて、今後の見通しについて調べてまとめてみました。

実は、私は結構、不動産好きでして、マンション購入&投資経験もあり、今でも月に3~4件は物件を見に行く生活をしていますので、そんな不動産マニアの視点から事件の詳細について少し掘り下げてみました。

不動産投資をやっている方、マンション購入検討者などは参考にしてみてください。

TATERU(タテル)の「預金データ改ざん」で何が起きたのか?

2018年12月27日にTATERU(タテル)公式HPのIRニュース欄に「特別調査委員会からの調査結果報告書(要約版)受領および今後の対応に関するお知らせ」というリリースがアップされましたね。

IoTなどのテクノロジーを活用し、不動産業界に新たなソリューションを創造する株式会社TATERU(タテル)のIRニュース一覧です。

 

かぼちゃの馬車&スルガ銀行の問題と混同してしまっている方も多そうですので、比較しながら見ていきたいと思います。

では早速、調査結果に至る経緯、事件の全体像、調査結果の概要、今後の見通しまで一つ一つ見ていきましょう。

 

TATERU(タテル)の顧客預金データ改ざんの全貌

かぼちゃの馬車・スルガ銀行問題との違い

TATERU(タテル)の再発防止策と今後の業績見通し

ビジネスモデル・会社の体質・株価などの会社全体像

 

まずは、預金データ改ざんの概要からです。特別委員会の調査報告書に全てまとまっているのですが、全て読むのは大変なので重要な項目を抜粋しておきます。

サマリーとして全体像を掴んでいただければと思います。

 

事件概要従業員が顧客から提供を受けた預金残高データを改ざんし、実際より多く見せて金融機関に提出し、融資審査を通りやすくしていた事実が判明した。特別調査委員会を設置して調査を行うこととなった。
特別調査委員会メンバー委員長:濵 邦 久 (濵法律事務所 弁護士 元東京高等検察庁検事長)
委 員:宮 下 正 彦(TMI総合法律事務所 弁護士)
委 員:柴 野 相 雄(TMI総合法律事務所 弁護士)
委 員:富 田 裕(TMI総合法律事務所 弁護士 一級建築士)
委 員:秦 武 司(社外取締役 監査等委員)
調査内容・2018年9月4日時点でTATERU Apartment事業の新築アパート販売の営業部に所属していた従業員94名(退職者含む)への調査

・2018年10月7日~2018年12月13日までの期間に、顧客や金融機関を含む関係者123名からヒアリング調査

・上記営業部のパソコン 95台、スマートフォン 92台をフォレンジック調査(画像データ、チャット、SMS、メールなど)

・TATERU(タテル)の新築アパート購入に関する取引を行った顧客1,568名への情報提供の要請

・2015年以降に顧客に対して融資を行った金融機関33社に対して融資審査資料の開示について協力依頼

改ざん件数改ざんが実行されたと認定する数は、本調査対象期間における成約棟数2,269件のうち350件
当初の報道・経緯について・2018年8月31日に日経新聞から「アパート融資資料改ざん、TATERUでも」というタイトルの記事で改ざんに関する報道がされる。

・都内在住の顧客に対して、約23万円の残高を約623万円に水増しされていた事実が発覚。TATERU(タテル)は同社の担当者による改ざんを認めた。

※引用元1:アパート融資資料改ざん、TATERUでも (日経新聞)
※引用元2:特別調査委員会からの調査結果報告書(要約版)受領および今後の対応に関するお知らせ (TATERU公式HP、IRニュース)

 

次に、事件を時系列別に見ていきましょう。

そして、投資をしている又は検討している方もたくさんいるかと思われますので、ビジネスモデルや会社概要について触れつつ、株価や社内体制についてメスを入れていきます。

その後、かぼちゃの馬車&スルガ銀行問題との違いを独自見解を含めて徹底分析していきますので、順を追ってもう少しお付き合い頂ければと思います。

 

TATERU(タテル)の「預金データ改ざん」はいつから・誰が・どのようにして行ったのか?経営陣の関与はあったのか?

次に時系列で表にまとめてみました。

私は不動産融資の不正は決して数社だけの問題ではないと思っています。業界全体の問題ですし、他企業でも同じような事件が起こる可能性もあります。

不動産投資を行っている方は、株の推移も含めて、時系列でどのように事件が動いたのかを頭に入れておきましょう。

※下に営業フローも記載していますので、前提情報として頭に入れておいても良いと思います。

「預金データ改ざん」が発覚するまでの時系列

2010年頃顧客が金融機関による融資審査に通りやすいようにするため、複数の事業所において改ざんが行われていた可能性がある。(正確な時期は明確ではない)
2014年頃会議において改ざんをやめるように、営業本部長から営業部長に対して通告があった。それでも一部ではリスクを取って改ざんを行う者もいた。
2018年2月土地売買及びアパート建築契約をした顧客から、融資申請の際に営業によるエビデンス改ざんがあった旨を述べる書簡を受領。営業本部長が個別に対処。それ以上の調査は実施せず。
2018年4月都内在住の50代の方が、TATERU(タテル)から名古屋市内で木造3階建て、全9戸のアパート物件を紹介された。土地・建物で約1億1000万円の購入資金は山口県の西京銀行の融資を利用し、自己資金がなくてもアパートを経営できるとの提案を受けた。
2018年6月上記顧客は西京銀行に直接、TATERU(タテル)の担当者が提出した自分の預金残高を示すデータの開示を要求。確認すると約23万円の残高は約623万円に水増しされていた。
2018年8月末日経新聞にて改ざんの事実があった旨が報道される。
2018年9月4日特別調査委員会を設置。
2018年9月14日再発防止策を発表。
2018年12月27日特別調査委員会の調査結果報告書が提出される。

※引用元1:アパート融資資料改ざん、TATERUでも (日経新聞)
※引用元2:特別調査委員会からの調査結果報告書(要約版)受領および今後の対応に関するお知らせ (TATERU公式HP、IRニュース)

 

「預金データ改ざん」発覚後の株価推移

TATERU※引用元:日経新聞TATERUスマートチャートプラス

 

1月24日時点では「318」という数字まで落ち込んでいます。一時期、回復したのですが、そこから徐々に下げて今は横ばいぐらいの推移となっています。

今後の展望については「TATERU(タテル)の「預金データ改ざん」を分析すると…」の項目で詳しく見ていきます。

 

「預金データ改ざん」を助長した営業フロー

前提条件として営業フローの方法をまとめてみました。今回の不正は、④から⑤の過程において発生した事象です。

 

①営業が見込み客に対して連絡(電話、メールなど)

↓↓↓

②営業がパソコン・スマートフォンのチャット機能などでやり取り、アパートの提案を行う

↓↓↓

③アパート経営を実施する旨の申し出があった場合、購入申込書の他、収入を証明できる資料等の融資審査関係書類を顧客から収集・受領する。

↓↓↓

④営業部長が金融機関に対し融資申請関係書類を提出。金融機関による顧客の融資審査が行われる。

↓↓↓

⑤融資審査の結果、融資が承認された場合は、顧客に不動産売買契約書、請負契約書及び重要事項説明書に署名押印してもらう。

※引用元:特別調査委員会からの調査結果報告書(要約版)受領および今後の対応に関するお知らせ (TATERU公式HP、IRニュース)

 

一般的な流れと同じように思いますが、営業部で完結するような流れになっているため、このレポートラインの中で防止できるような仕組みとは言えない状況だったということですね。

実際に、再発防止策では、営業フローを一部変更して「事務課」という審査業務を専門に扱うチームを創設するとしています。(最後の項目に詳しく書いています)

 

改ざんの方法は?

実際の改ざんの方法もガイアの夜明け「マネーの魔力」を見るとイメージがつくと思います。私も何度か拝見しましたが、衝撃的な映像でした…。

※後ほど触れますが、マネーの魔力で取り上げられているのはかぼちゃの馬車&スルガ銀行、レオパレスですので、全く事情が違うという点だけ注意です。

ここからはTATERU(タテル)がどういうビジネスモデルの会社なのか、かぼちゃの馬車問題とはどのような違いがあるのかを詳しく見ていきます。

今後の対応について気になる方は、TATERU(タテル)の「預金データ改ざん」を分析すると…まで読み飛ばして下さい。

 

そもそもTATERU(タテル)はどういうビジネスモデルの会社なのか

TATERU(タテル)は不動産融資が主力商品ですが、実績を見てみると、下記のようになっています。

管理戸数は2016年時点で13,187戸、オーナー数は2016年時点で1,077人となっています。

 

タテル タテル

※引用元:TATERU Apartmentの実績数 (TATERU公式HP)

 

管理戸数・オーナー数ともに右肩上がり、内訳としては会社員・公務員が圧倒的に多く、富裕層ではない中堅のサラリーマンをターゲットに業績を拡大してきたことが分かります。

9割がサラリーマンということですから、資産形成に興味があるミドル世代を中心に不動産投資を販売しているということですね。

 

タテル

※引用元:TATERU Apartmentの実績数 (TATERU公式HP)

 

40代~50代のサラリーマンが定年後の生活を真剣に考え出して、「今の生活レベルを変えたくないけど資産形成はしなければいけない」という状況になり、不動産投資を一つの選択肢として検討しているということでしょう。

在庫を持たないビジネスモデル

独特かつ他社との差別化がされているビジネスモデルがTATERU(タテル)成長の最も大きい理由と言っても過言ではありません。

他と全く違うのが土地の在庫を抱えていないという部分です。

不動産会社は通常、銀行から多額の借金をして土地を購入又は仲介して、顧客にマッチングするという流れになっています。

TATERU(タテル)の場合は、基本的に土地を保有していません。つまり、在庫として抱えている無駄な資産が少ないということです。画像の左下の従来の在庫モデルとTATERU Apartmentの1次流通モデルという部分がビジネススキームを可視化した図になります。

 

タテル

※引用元:2018年12月期第3四半期決算説明資料(TATERU公式HP、決算資料)

 

TATERU(タテル)側の事情としては、うまくリスクヘッジをしつつ、土地から推測できる収益やアパートの構造などをシミュレートして、顧客に提案をすることで、高い収益を上げられるというメリットがあります。

 

あくまで一つの事例ではありますが、TATERU(タテル)の収益をシミュレーションしてみましょう。

 

【建築の受注】

1棟の建築売上5,000万×粗利20%=1棟あたりの粗利1,000万

【物件管理の受注】

1部屋の管理売上年間8万×粗利75%=1部屋あたり粗利6万

1部屋粗利6万×平均9部屋=1物件あたり粗利54万

※参考元:2018年12月期第2四半期決算説明会の内容書き起こし(ログミーファイナンス)

 

【建築】の1,000万と【物件管理】の年間54万、合計1,054万がTATERU(タテル)の年間収益になるというビジネスモデルになっています。

管理の年間54万というのは物件の管理を委託されている限りは永続的に発生しますので、ストックとして収益が積み上がっていく仕組みになっています。

じゃあ、実際の売上はどうなのか?売上推移表を見ると2017年12月期の決算で670億1,645万という業績となっています。

 

タテル

※引用元:代表メッセージ(TATERU公式HP)

 

 

基本的に土地や物件の「未稼働在庫」を持たないビジネスモデルを採用しているので、670億の売上があったとしても在庫は61億となっており、非常に効率的にキャッシュを生み出しています。

従来のビジネスモデルとの違いを、金額で算出してみました。

 

・TATERU(タテル)のビジネスモデルで売上670億の場合

→在庫が61億

↓↓↓

・通常企業のビジネスモデルで売上670億の場合

→在庫は391億(アパートが完成するまでの棚卸期間は7ヶ月で計算)

391億-61億=330億のキャッシュを

有効に使える(無駄なキャッシュがない)!!

 

売上が増えれば増えるほど銀行からの融資もたくさん必要だった従来のビジネスモデルとは違ったビジネスモデルをとっているからこそ、これだけ爆発的に売り上げが増加していると言えます。

今回の事象は当然、改善しなければいけないことですが、ビジネスモデルは非常に優秀!

直近の業績ハイライトから各指標を見ても、安定した業績が出せていることが分かります。

 

売上670億1,600万100%
営業利益58億9,800万8.6%
経常利益58億6,300万8.6%
純利益39億9,500万5.8%

※引用元:「業績ハイライト」 (TATERU公式HP)

 

これは同業他社と比較しても優秀です。

 

オーナーと入居者へのメリット・強み

ディベロッパーが間に入っている場合は、その分のマージンが上乗せオーナーの負担が増えます。

一方、TATERU(タテル)の場合は、オーナーが直接土地を仕入れていますので、費用面でメリットが出てきます。

また、アプリを活用してアパート経営が始められるというのも強みとなっています。

決済手段もフィンテックの代表的な企業であるマネーフォワードと連携していますし、会員登録から土地の選定、アパート完成までがワンストップでできてしまう仕組みがあります。

 

タテル

 

「IoT」関連でも、「Robot Home」という子会社では賃貸住宅向けのIoTサービスを取り扱っており、ここも大きな収益の柱になる可能性を秘めている事業と言えそうです。

 

タテル

※引用元:2018年12月期第3四半期決算説明資料(TATERU公式HP、決算資料)

 

株式会社Robot Homeは、IoT機器の開発を通じて、賃貸住宅の入居者にスマートで快適な暮らしを、オーナー様には入居率キープに効果的なスマートホーム化のご提案をいたします。IoTによる賃貸不動産管理業務の効率化についても、ぜひご相談ください。

 

TATERU(タテル)設立からの沿革

TATERU(タテル)の成長過程(沿革)をまとめてみました。創業期、変革期、成長期と3段階に分けられており、更にインベスターズクラウドからTATERU(タテル)への社名変更という流れになっています。

代表メッセージには「ITによって」という言葉が出てきており、創業当初からITというのが一つのテーマになっていることが分かります。

 

インターネットで不動産業界を変えたい。そんな想いを抱いて 2006 年に立ち上げたのが、インベスターズクラウド(現:TATERU)です。当社は、創業当時から SEO 対策に力を入れたウェブサイトによる集客を行い、ITによってアパートを効率よく売ることができる独自の仕組みをつくりあげてきました。そして、「世界中にカッコいい空間を」生み出すことをテーマに掲げ、1 棟として同じものがないデザイナーズ物件を提供する、従来の不動産業界にはない新しい発想をもって歩んできました。

※引用元:代表メッセージ (TATERU公式HP)

 

HPにも記載されていますが、簡単に4つのフェーズのトピックです。

【2006~2007年】

創業期としてSEOに注力、WEBを活用した効率的な集客方法を構築

【2008~2010年】

アパート経営がオンライン上でできる「アパート経営プラットフォーム」を構築。社内も業務の効率化を図り、社内全体を IT で管理できるシステムを構築

【2011~2017年】

2015年12 月には、東京証券取引所マザーズ市場へ新規上場。さらに翌年の2016年12月には東京証券取引所市場第一部へ上場市場を変更

【2018~】

2018年4月1日に「株式会社TATERU」へ社名変更

 

複数の小会社を持つTATERU(タテル)の会社概要と各事業内容

2006年の設立ということは13年目の会社ですね。

 

社名株式会社TATERU(タテル)
TATERU, Inc.
住所東京都渋谷区神宮前1-5-8-20F / 21F(受付21F)
設立日2006年1月23日
資本金72億72百万円
従業員505名(連結ベース/正社員/2018年9月末現在)
事業内容アプリではじめるIoTアパート経営「TATERU Apartment」の開発・運営
不動産投資型クラウドファンディング「TATERU Funding」の企画・運営

 

子会社は下記4社で、Apartment事業の他にも民泊事業、クラウドファンディング事業など、事業を多角化してきています。

  • 株式会社 Robot Home(IoT事業)
  • 株式会社 TATERU bnb(民泊事業)
  • 株式会社 TATERU Funding(クラウドファンディング事業)
  • 株式会社 インベストオンライン(アパートプラットフォーム事業)

 

株式会社 TRASTA」という旅行関連のプロダクトを保有している関連会社もあります。

「不動産」という業界だけではなく、「IT」業界でもシナジー効果が見込める事業や会社には積極的に投資をしていく方針であることが分かります。

2018年には、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施する「攻めのIT経営銘柄2018」にも選定されています。

タテル

 

TATERU(タテル)の改ざん問題はスルガ銀行・かぼちゃの馬車とは全く別問題として考えるべき

スルガ銀行とかぼちゃの馬車が話題になりましたが、TATERU(タテル)の事件と混同しないように整理してみました。

 

 

かぼちゃの馬車とスルガ銀行を含む関係者の関係性は下記です。かぼちゃの馬車を運営していたのはスマートデイズという会社です。

 

タテル

※引用元:オーナーに聞く「かぼちゃの馬車」に乗った理由 (日経XTECH)

 

事件の発端は下記の報道だったと記憶しています。それまでは比較的好調とされてきたスマートデイズですが、日経新聞の報道から風向きが変わってきました。

 

女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営する不動産会社スマートデイズ(東京)が物件所有者への賃借料の支払いを突然停止し、問題に詳しいNPOへの相談が急増していることが15日までに分かった。所有者は1億円以上を借りている人が大半で、NPOは自己破産者が続出する恐れがあると警戒する。

※引用元:シェアハウスの相談急増 NPO「破産続出」警戒 (日経新聞)

 

スマートデイズは、当時、都内を中心にシェアハウス1000棟を運営しており、2020年に上場も目指していました。

私も個人的に2014、2015年あたりから注目していた企業でしたし、順調に事業を運営しているように見えていました。

 

多くの人が騙された「かぼちゃの馬車」問題の背景は?

サラリーマンは、50歳を過ぎると定年後の生活を考え始める人が多く、アパート経営等の不動産投資を始める人も多いと言われています。

ガイアの夜明けでは50代男性で銀行から1億円を借りて「かぼちゃの馬車」に投資したという人物が登場しています。

1億円を借りた後から破産手続きまで下記のような流れになっています。(アパート経営を開始した時期は明確には出ていませんでした。)

 

<かぼちゃの馬車の場合>

2017年10月に家賃が減額

↓↓↓

2018年1月に支払い停止

↓↓↓

2018年5月に破産手続き

↓↓↓

当初9割と言われていた入居率も実際には約4割だったことが判明

 

2018年5月に開催された破産手続きの説明会に集まっていた人のほとんどが頭金なしで億単位の融資を受けていたそうです。

実際には入居がうまく進んでおらず、業績が悪化しているにも関わらず「家賃30年保証」などと嘘をついてオーナーを増やしていたことが根本的な問題です。

 

シェアハウス「かぼちゃの馬車」とは?

かぼちゃの馬車は全て女性専用のシェアハウスで構成されており、家具や家電も備え付けられており、すぐに入居できる環境になっていました。

当時のキャッチフレーズは「トランクひとつでそのまま入居」となっており、低価格の家賃で女性専用という安心感を売りにして攻勢をかけていました。

簡単に当時運営していたスタンダードなアパートの概要をまとめました。

 

部屋数9部屋
家賃3万円
共益費2万円
ターゲット地方から上京してくる若い女性。(学生、職探しをしている社会人など)

※多少、物件により数字は前後すると思います。

 

主に職探しをしている社会人がターゲットです。なぜ職探しをしている人なのか?という点は次のビジネスモデルを見て頂ければ分かります。

 

「かぼちゃの馬車」の異常な家賃保証と、そのビジネスモデル

契約締結から家賃収入が入るまでの流れもまとめてみました。

 

スマートデイズとオーナーが契約締結

↓↓↓

銀行がオーナーに融資

↓↓↓

オーナーが土地及びアパート購入

↓↓↓

スマートデイズが一括借り上げ

↓↓↓

アパートローンと家賃の差額が収入としてオーナーに入る

 

他と少し違うのが、スマートデイズは企業に入居者を人材紹介することで、紹介料を得るビジネスモデルをとっていたのです。したがいまして、ターゲットが「職探しをしている女性」になるわけです。

紹介手数料は年収25%だそうで、年収300万円であれば、75万円がスマートデイズの収益になるという計算になります。賃料5~6万円の入居者でも紹介手数料分で家賃を無料にしても黒字になるというのが同社が採用していたビジネスモデルでした。

しかも、スマートデイズは30年間の家賃を保証していたのです。

単純計算ですが、例えば1棟あたり銀行のローン返済が毎月50万だとして、家賃収入が毎月70万だとすると、月20万が収益として毎月入ってくる計算になります。

月20万の家賃収入が30年保証されているということですから、アパートローンを組んで投資をしたくなる気持ちも分からなくないです。

 

裏で動いていたスルガ銀行の不正、改ざん問題

「鉄道模型ローン」「ロードバイクの購入ローン」「着物ローン」など、個人に特化したローンを多数開発しており、独自路線で高い収益力を誇り、地銀の優等生として手本とされてきた銀行です。

販売代理店が通帳の預金残高を改ざんしており、改ざんした通帳データをスルガ銀行に持っていくと、そのまま通帳データのみで受け付けてくれたと言われています。

スルガ銀行側からの改ざん指示の証拠なども発見されており(LINEのやり取り等)、スルガ銀行側が関与していた可能性が高いという見方があります。

 

TATERU(タテル)の「預金データ改ざん」を分析すると…

TATERU(タテル)の預金データ改ざんを客観的に分析した結果をまとめます。

 

初動対応

第一報の日経新聞には下記のように書かれています。

TATERUは31日、日本経済新聞の取材に対し「事実であり、把握している」と話し、ほかの案件でも同様の改ざんがあったかどうかについては「現在調査中」としている。

※引用元:アパート融資資料改ざん、TATERUでも (日経新聞)

 

直後に出したリリースの中でも事実として認めています。初動としては、まず事実を認定して、即時調査に動き出したことで一旦は復活に向けての一歩が踏み出せた印象です。

私が見る限り、初動対応に不備はありませんでした。

 

経営責任の明確化

そして、初動の次にとられた措置(調査結果が報告された後)は下記2点です。

  • 当時の営業本部長が問題を知っていた最高役職者であるが、その方が辞任
  • 代表取締役及び業務執行取締役の報酬の減額を実施

これも比較的、スタンダードな対応であり、何か問題があるような内容は見られておりません。セオリー通りの対応策が出てきたことで少し安心感はありました。

 

再発防止策の発表

最後に、再発防止策の発表というフェーズですが、これも納得できるような改善策が盛り込まれていましたので、問題はなさそうです。(最後の項目で詳しく触れます)

 

以上の経緯を踏まえて、今後に向けて、私が頭に入れておきたいと思ったのは下記です。私は周りと比べて、ポジティブな意見を持っています。

 

・当初から事実関係を認定し、ごまかしたり、曖昧にするような行動は見られていない

・かぼちゃの馬車はオーナーに直接的な金銭的損害が発生したが、現時点では金銭的な損害は見られていない

・かぼちゃの馬車と比較すると、資金繰りや売上面ではまだ安定しており、入居者に迷惑がかかっているわけではない

・第三者で構成された特別調査委員会を設置、調査結果が明らかになり再発防止策が発表されている&改ざん防止システム等の取り組みも推進している

 

スルガ銀行とかぼちゃの馬車の問題と比較しても、かぼちゃの馬車のようになる心配は見られていないという点、改ざん発覚後の企業姿勢を見ても更に悪化するような事態の予兆は見られていないという点、この2点に着目すべきと考えます。

 

TATERU(タテル)は再発防止に向けた取り組みを開始

最後に、特別調査委員会が発表した資料の中に盛り込まれている再発防止策についてです。

TATERU(タテル)側から発表・実行されている改善策をまとめます。

株式会社TATERU(タテル)では、TATERU Apartment 事業における一連の問題で、関係者各位には多大なご迷惑とご心配をおかけしておりますことを、深くお詫び申し上げます。今後は、再発防止策を確実に実施するとともにコンプライアンス意識を徹底し、当社役職員が一丸となり信頼の回復に努めてまいります。

 

業務フローの変更営業社員とは独立した部署に「事務課」を新設。融資関係資料の顧客からの受領及び金融機関への提出は事務課においてのみ実施。
契約適合性手続きの厳格化顧客の売買等の契約適合性を確認する手続きを厳格化。新設する事務課で、顧客の預金通帳等の残高データの原本を確認。
業務モニタリング内部監査室によるモニタリング(抜き打ち検査)を行う。
コンプライアンス遵守体制の見直しコンプライアンスを重視する明確なトップメッセージを継続的に発信。教育・研修体制の強化・見直しを実施。
内部通報制度の充実内部通報制度の存在及びその意義を全役職員に周知。関係者用のコンプライアンスラインを開設。

 

そして、上記を踏まえて特別調査委員会がTATERU(タテル)側にアドバイスをしている内容が下記です。

 

企業風土改革企業風土が不正行為を生む要因の一つであった。販売目標の過度な重視の抑制、風通しの良い、コミュニケーションがとりやすい職場環境を造成していくことが重要。
コンプライアンス委員会の拡充コンプライアンス委員会等の制度があったものの、必要な情報があがってこなかった。そのため、コンプライアンス委員会に対する付議事項や、議論・決議されたことを具現化する方法等を明確に規定する整備をする。複数名の外部有識者を委員に任命する。開催頻度・開催時間を増やす。
コンプライアンス部の創設コンプライアンス委員会の下部組織としてコンプライアンス部を創設。内部通報の社内窓口をコンプライアンス部に変更し、通報状況を監査等委員会、コンプライアンス委員会及び経営会議に上程するよう規定を整備。
業務執行に関わる社外取締役(監査等委員以外)の選任・任命役員の認識・行為に対する監視・監督を強化するために、業務執行サイドに現経営陣とは利害関係を有さない、経験や見識の深い社外取締役を選任・任命する。
ハラスメント防止委員会・窓口の活性化ハラスメントの通報窓口、委員会も設置されていることから、制度の活性化を図る。ハラスメントに関する教育、研修を実施。

※引用元2:特別調査委員会からの調査結果報告書(要約版)受領および今後の対応に関するお知らせ (TATERU公式HP、IRニュース)

 

今後、再発防止策がしっかり推進されているのか気になるところですが、2点の理由から私は良い傾向が出てきている及び事業が傾くというリスクは小さいのではないかと考えています。

 

①1月に発表されたリリースで改ざん防止システムの運用が明らかになった

ブロックチェーン技術を活用したソリューションを開発・提供するDiginex Limited(本社:香港/CEO:Richard Byworth 、以下Diginex)と「データ改ざん防止システム」の共同開発を開始しましたので、お知らせいたします。

※引用元:ブロックチェーン技術を活用したソリューションを開発・提供する Diginexと「データ改ざん防止システム」の共同開発を開始 (TATERU公式HP、リリース)

 

タテル※引用元:ブロックチェーン技術を活用したソリューションを開発・提供する Diginexと「データ改ざん防止システム」の共同開発を開始 (TATERU公式HP、リリース)

 

②事業の多角化によりリスク分散が進んでいる

Robot Home等、事業の多角化がうまく進んでいるように思います。

タテル

民泊関連のIot活用事業、親和性が高い会社との提携や出資など、まだまだ多角化の道のりは先が長いですが、安定した経営基盤を作るためのポートフォリオ作りは進んでいるのかなという印象を持っています。

 

 

最後に

今回の事件は、不動産業界に衝撃を与えましたが、TATERU(タテル)の今までの姿勢や経緯は今後への希望が持てると言えます。あとは、再発防止策と改ざん防止システムの運用などを粛々と実行していくのみです。

TATERU(タテル)は未来の不動産業界を引っ張っていくポテンシャルがある企業です。私個人的な意見になりますが、間違いなくIT×不動産は相性が良いです。今後の業績推移、株価を注視しつつ、復活に期待したいと思います。